カポーティ

NKYYSD2006-08-04

http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
 
ティファニーで朝食を』『遠い声、遠い部屋』などの名作と数々のゴシップで、今なお“伝説の作家”として記憶されるトルーマン・カポーティ
1959年のある朝、既に人気作家だったカポーティフィリップ・シーモア・ホフマン)は、新聞に載った小さな記事に目を留める。それはカンザス州の田舎町で起きた、一家四人惨殺事件だった。そのあまりにも凄惨な手口に興味を覚えたカポーティは、友人ネル・ハーパー(キャサリン・キーナー)を助手として、事件の取材に着手。ノンフィクション・ノベルという新しいジャンルで傑作をモノに出来ると予感したカポーティは、逮捕された二人組の犯人にインタビューを続けることに。とりわけ、その一人ペリー・スミスとの出会いは彼の創作意欲を強く刺激するのだったが…。
 
トルーマン・カポーティについて詳しく知ってるわけじゃないので、フィリップ・シーモア・ホフマン演じるカポーティが、どこまで本人に似ているのかは不明。少なくとも『名探偵登場』に出演した時の本人とは似ていない。
でもアカデミー賞では主演男優賞を受賞。ゴールデン・グローブでも主演男優賞。他にロサンゼルス批評家協会賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、ボストン映画批評家協会賞、ワシントンDC映画批評家協会賞、英国アカデミー賞、ニューヨーク・オンライン映画批評家協会賞、サンディエゴ映画批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞、フロリダ映画批評家協会賞、全米映画批評家協会賞、シカゴ映画批評家協会賞、放送批評家協会賞、全米オンライン映画批評家賞でも『主演男優賞』を受賞。ほとんどアメリカ国内の賞ばっかりだけど、まあ、よほど特徴をつかんでるんだろね。知らんけど。
 
て、本人に似てるかどうかはともかく、見応えのある作品ではあったことは確か。カポーティ最後の傑作『冷血』の、メイキングという意味でも興味深い。
 
ただ、この作品はそうした話題性は豊富なんだけど、一般受けする作品じゃないような気がするな。観てて楽しい映画じゃないしね。
 
巧みな話術で社交界に人脈を広げ、名声を高めたトルーマン・カポーティ。不細工な小男で、社交界での名声と芸術だけが全てだった自意識過剰なゲイ。そしてその芸術至上主義の為に、自ら意識せずに悪魔に魂を売り払ってしまった天才作家。
悪魔は彼に『冷血』という傑作を授けるが、その完成には犯人の死刑執行が必須。インタビューを続ける為とはいえ、親密な関係を築いていったペリーに対し、死を願うようになるカポーティ。やがてペリーの絞首刑に立ち会ったカポーティは『冷血』を完成させ更なる名声を手にしたものの、以後死ぬまで、本格的な作品は一本も書けなくなってしまう。
 
芸術や名声のためなら自ら「冷血」に徹せられる男の、そんなデカダン人生を観て楽しいかっつーと、ちっとも楽しくない。楽しくはないが、この実在した男の毒にはどこか魅せられる。一つの作品を作り上げるために、ここまで苦しみ抜いた人間がいたのね、てのも一つの発見だし。ていうかアレよ、作者のキャラと作品は別物だっちゅーことの再発見ね。善い人間が感動的な作品を作るとは限らないの。「傑作」を作り上げる「天才」てのは、えてして人間的・社会的にはダメダメだったりするし。
 
映画としての完成度はとても高い。映像はしっとりと物語のトーンを表現しているし、役者陣も上手いし。
もっともホフマンのカポーティは、結局のところカポーティも普通の人間だったのだということを表現したに過ぎない。実際はもっともっと闇のある人間だったと思うんだけどな。数々の主演男優賞を否定する訳じゃないけど。
一方、ペリー・スミスを演じたクリフトン・コリンズJr.と、ネル・ハーパー・リーを演じたキャサリン・キーナーは実に巧かった。特にクリフトンは繊細な部分を見せながらも、どこか道徳心の欠如を感じさせ、ペリーという人間の深みを表現していたように思う。
 
まあ、そんな感じなんで、万人向けの映画とは思えないけど、映画らしい映画を観たい方は是非どうぞ。いろいろ考えさせられます。こうして生まれた『冷血』を、再読してみるのも面白いかと。

冷血

冷血

 
あ、そだ、この試写で面白かったこと。
試写が終わってしばらく経っても、ドアが開かなかったのよ。普通は宣伝の担当さんが開けてくれるんだけどね。
「?」と思って自分で開けて出てみたら誰もいない。更に「?」となって会場となった建物の外に出ようとしたら、ガラスドアの向こうで担当さんたちがモジモジと。どうやら試写中に外へ出ていて、オートロックで閉め出されたらしい。わはは。急いでたんで声もかけなかったけど、暑い中お疲れさまでした(笑)。