ハード・キャンディ

ドS少女

http://www.hardcandy.jp/
 
警察庁によると、20歳未満に対する強姦、強制わいせつの認知件数は05年で5846件。96年(3130件)と比べると、87%増だそうな。ほんと、最近はそんな事件ばっかりだしねえ。まあ、これは日本に限った話じゃないらしく、米国バージニア州では今年2月、性犯罪者に「去勢」の選択肢を与える法案が提出されたとか。『ザ・ウッズマン』の時に書いたミーガン法もそうだけど、アメリカはペドファイルに対してとことん厳しいね。逆に言えば、それだけペドファイル絡みの犯罪が多いってことだろけど。日本もそのうち、そういう法律を作らざるを得ない状況になるのかな。
 
ただ、同じく警察庁の資料によれば、平成14年度上半期(古いデータしかなかった)の「出会い系」サイト絡み検挙件数は793件。そのうち400件が児童買春(女子高校生が335人、女子中学生が173人)なんだそうな。しかも手口が判明した211件の内、198件が女性児童側から誘ったものだとか。子供を襲う大人もいかんけど、子供も大人を食い物にしちゃいかんよ。
 
て、なんでこんな話をしたかというと、本作が日本の「おやじ狩り」にヒントを得て作られた映画だから。複数の少女が年配男性を誘惑して金品を巻き上げたこの事件に、プロデューサー、デイビッド・ヒギンズはそうとう興味を持ったらしい。まあ、誰が加害者だか被害者だかわからん事件だからね。
 
もっとも、本作の少女は金品目当てじゃなくて復讐が目的らしい。「らしい」というのは、作中でそれらしいことを言ってたから。物的証拠となるものは何もないけど、何やら絶対的な確信でもって男をいたぶってた(怖わー)。
 
しかし、なんだろねー。ロリコンおやじ(パトリック・ウィルソン)を変態男の代表とし、それを狩る少女(エレン・ペイジ)を世の女性の代表と見ればそれなりにメッセージ性はあるんだろうけど、その「復讐」描写が怖すぎて、ほとんどホラー映画になっちゃった(スプラッタじゃないけどね)。いかにもライオンズ・ゲートが飛びつきそうな映画だわ(日本での配給・宣伝はクロックワークスファントム・フィルム)。
男が少女をお持ち帰りするまでが全体の1/3で、残りはひたすらねちっこい虐待シーン。肉体的虐待以上に、精神的に追いつめるその手法は、とても14歳のテクニックとは思えない。つーか、ここまでくるともはやハードSMの世界でしょ。ロリコン男とドS少女、どっちにも感情移入できないノン・ストップSMショーロリコンM男には夢のような映画かもしれんが。
 
てなわけで、(ロリコンM男を除けば)観て気持ちの良い映画ではないけど、「先の展開が読めないサイコ・サスペンス」という見方をするなら、実はかなりの秀作。あわよくば少女とナニしたい…なんて考えてるおっさん連中は、とりあえずこれ観て怯えなさい。善悪とか道徳観の基準を曖昧にした、かなり挑戦的な映画ですよ。
 
ちなみに、(以下ネタバレ)
 
ラストに男が飛び降りるけど、あれロープが張り切ってないし「ドサッ」という音も聞こえたから、首は吊ってないよね。地面に落ちたんだよね。宣伝の人は「首吊ったんじゃないでしょうか」て言ってたけど、俺はあれも復讐の一つだと思うなあ。劇中で「殺しちゃったらつまらん」て言ってたし。飛び降りた後「なんちゃって」みたいなことも言ってたし。
追記:その後、ビデオで再見したという担当さんが、「やはり首吊ってました!」とメールしてくれた。ふーむ、そうだったかなあ。そんならまあ、そういうことで。