機械じかけの小児病棟

機械仕掛け

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ジャパニーズ(アジア)ホラーでは定番とも言える「病院」を舞台とした心霊映画も、西洋作品には意外と少ない。ていうか、きっと沢山あるんだろうけど記憶に残ってない。病院絡みのホラーで今思いつくのは『TATARI』『Dr.ギグルス』『セッション9』『Re:プレイ』『コーマ』『ホラー・ホスピタル』『マニトゥ』『ホスピタル・インフェルノ』あたりだけど、大抵は「現在は廃墟と化した精神病院」が舞台だったり、殺人鬼モノだったり、そもそも厳密にはホラーじゃなかったりと、どうも病院に潜む幽霊てのはあんまり一般的じゃないらしい。
 
夜の病院って怖いのにねえ。お袋が入院していた時に何度か病院に泊まったけど、煙草を吸いに外へ出るたび真っ暗な廊下に怯えたもん。変な音が近づいてくるし。あれ何だったんだろなあ。俺が通るたびに真っ暗な廊下の奥から近づいてきた変な音。いや知りたくないけど。
  
てなわけで、このジャンルとしては意外と少ない本格的「病院ホラー」の本作。夜の暗い廊下。長い間、閉鎖されたままのフロア。院内で語り継がれる幽霊譚。夜な夜な何かに怯える子供たち。金属の矯正器具。不気味な物音。妖気漂う病院のデザイン。流石はスパニッシュ・ホラーの巨匠となりつつあるジャウマ・バラゲロ。結構分かってるじゃんか、あんた(日本語読めたらごめん)。
 
映画が始まってすぐ、入院中の少年の足がイヤーな音を立てて折れる。骨折する「ゴキッ」て音が大音量で響くのよ。イヤだよーこれ。すぐにレントゲン台に移されるんだけど、レントゲン写真を写す瞬間、更に骨が砕ける。もういきなり痛いの。切株系スプラッタやスラッシャーの血しぶきには慣れたけど、この骨折系ってのは痛さがリアルで怖いねえ。
リアルといえば、この骨が折れる時の子供の叫び方がリアル。「ぎゃー!」みたいな嘘くさい叫びじゃなくて、あまりの激痛でほとんど声も出ないまま「ふんぐー!」て言うのよ「ふんぐー!」て。顔真っ赤にして、飛び起きざまに「ふんぐー!」。で、その後に泣き出す。いや、実際にあんな骨折の仕方したら「ふんぐー!」以外に声なんて出ないだろうなあて思わせる名演技。演出も上手いんだろうけど、子役達がみんな巧くて驚いた。
 
主演は看護師役のキャリスタ・フロックハート。最初は「アリーかよ」て思ったけど、神経症気味な看護師役が妙にハマってた。他には『トーク・トゥ・ハー』のエレナ・アナヤとか『ヴァン・ヘルシング』のリチャード・ロクスバーグ等、微妙だけどそれなりのキャスティング。スペイン映画とはいえ英語発声で撮影してるし、国際市場をターゲットにしているだけのことはある。
 
『デビルズ・バックボーン』以来スパニッシュ・ホラーには期待してなかったけど、これは怖いわ。
アジアン・ホラーのようなじっとりした怖さとも、ハリウッド・ホラーのようなショック・シーンだけで脅かす手法とも違うから、新鮮さもあるしね。恐怖映画としての質も高いし、思わぬどんでん返しもあるし、ラストはちょっぴり感動したりして、最近のホラーとしては結構楽しめる一本。わざわざ痛いの観に行くのもアレだけど、そうした痛さを感じるにはやはり暗闇での大音量つーのが重要なので、観たい人は映画館で是非。俺はもう、何があっても入院したくなくないわ(笑)