DOGORA

撮ってんじゃねーよ

http://www.albatros-film.com/movie/dogora.html
  
「ずっと以前から、役者がいない、シナリオもない、言葉さえもない、ただ純粋に感情に訴え、心を揺さぶる映画を作りたいと思っていました。それが『DOGORA』です」(パトリス・ルコント
 
で、出来上がったのが、カンボジアの日常風景をバックに、ひたすらエティエンヌ・ペルションの曲が流れる75分の映画。壮大なミュージック・クリップ。ていうか環境ビデオ
 
やりたいことは解る。素晴らしい試みだと思う。少なからぬ人々が、この作品に心揺さぶられるであろうことも予想に難くない。カンボジアの美しいだけではない風景、日々を生きる人々の強い眼差し、躍動する生命の営み。カメラに切り取られたそれらの映像と、エモーショナルなの旋律。なんと美しいことか。
 
しかし。しかしだよ、ルコントさん。俺はこれ…面白くなかったよ。眠かったよ。ていうか半分は寝ちゃったよ。悪いけど。
それにさ、気になってるんだけど、ここに映し出されたカンボジアの数え切れない人々の肖像権はどうなってるのさ。あんたこの映画を「ドキュメンタリーじゃない」と言ってるんだろ。だったら、ごみ捨て場で物を漁っている子供たちに出演料払ってやったかい?彼らは、あんたの「芸術」のためにゴミ漁りしてるわけじゃないんだぜ。
それに、くたびれ果てた人力タクシーの運転手達と、富裕層の若者たちがワルツを踊るシーンを交互に映す編集意図は何?ありふれた単なる貧富の差を表現しただけ?それとも「王様と私」?貧しきアジアと偉大なる西欧文化との対比?「本作のテーマは生命は何より強く、素晴らしいということです」じゃないのか?ていうか何でカンボジア?なんで自国(フランス)の映像じゃダメなの?
まあ、それこそドキュメンタリーじゃないから、どんな作り方でも自由だけどね。貧しい中で力強く生きている人々を賛美しているような体裁で、実は高所から見下ろしてる空気が伝わってくるから気にくわないんだよ。
 
て、それこそ俺の勝手な感想に過ぎないけどね。
なんにせよ、75分は長すぎ。俺はストーリーもない映画を75分見続ける気力の持ち合わせがない。アート系実験映画は苦手だよ。スノッブな連中は絶賛しそうだけど。
でも、ところどころ心洗われるシーンはあったな。特に湖の中の小さな道を歩き続ける少女。スカートが濡れるのも構わずひたすら歩く彼女の姿は美しかった。とても美しかった。陸の上から足下濡らさないように撮影していたであろう西洋人には、手の届かない場所を歩いているようだった。美しかったよ。
 
追記:DVD化されますたな

パトリス・ルコントのドゴラ [DVD]

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