シリアナ

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CIAは何をしていた? (新潮文庫)

CIAは何をしていた? (新潮文庫)

 
本業が忙しかったので、なかなか映画、ましてやブログに手がつけられなかった。
と、既に公開が始まっちゃったことの言い訳完了。
 
えーと、タイトルの「シリアナ」。シリアとイラクとイランが一つになったら、ちゅーことを想定した仮想国名。ワシントンのシンクタンクあたりで、中東再建のコンセプトとして実際に使われている専門用語だそうな。
それにしても、このタイトルに関する駄洒落は聞き飽きた。 
 
この映画、CMか何かを見て興味を持って、「観てみようかな」なんて思ってる人、どれくらいるんだろ?いる?いるの?ほんとに?
いや、ここ読んでる人でこの映画に興味を持ってる人が一人もいないと分かってるんだったら、書かずに済ませたいのよ。すげー面倒くさい話なんだもん。
 
とにかくその、中東問題に疎いと極端に解りづらい映画。できれば本作のヒントというか、事実上の原案となった、ロバート・ベアのベストセラー「CIAは何をしていた?」を先に読んでおいたほうがいい。まあ、問題はそれを読んでもどこまで理解できてるか、ちゅーことだけど(俺の場合ね)。
 
ん〜。どう紹介すりゃ良いんだろな〜。
 
えーとまず、アラブの某国に、ナシール(アレクサンダー・シディグ)という王子がいるのよ。いるんですよ、とにかく
この王子様、若くて先見の明があって、いつまでもアメリカに搾取されていられるか!と、いわゆる石油メジャーから距離を置こうとしてる、なかなか骨のある御仁。ちなみに王子の相談役は、エネルギー・アナリストのブライアン(マット・デイモン)。
 
当然、こーゆー奴はアメリカの石油メジャーにとっては面白くない存在。石油メジャーが面白くないということは、アメリカにとっても面白くない存在ということ。イラクへの侵攻を見るまでもなく「国益」…特に石油に関しては最優先のアメリカだから、当たり前のように超法規的な陰謀が動き始めるのであった、ちゅーのが基本的な骨子
 
さて、石油メジャーら各界の権力者たちは、ナシールに替えて、自分たちの思うように操れる第二王子(アクバール・クルサ)を王位継承者にしようと画策し始める。更にCIAまでが独自に動きだし、ついにはナシール王子暗殺が計画されていく。
 
ナシール王子暗殺役に選ばれたのは、経験豊富なCIA工作員ボブ・バーンズ(ジョージ・クルーニー)。息子の大学進学を機に引退しようとしていたのに、いきなり現場に引き戻されてしまったボブ。まあ基本的には、このボブが主人公といっていいのかな。可哀想な役回りだけど。
 
一方、ナシール王子によって最も被害を被ったアメリカ最大の石油企業コネックス社は、ワシントンの弁護士ベネット・ホリデイ(ジェフリー・ライト)を雇い入れていた。コネックス社との競合に勝ち、カザフスタンの採油権を獲得した石油会社キリーン社が、合併話を持ちかけてきたのだ。
ベネットに任された仕事は、キリーン社が採油権を獲得した裏にある(であろう)疑惑を、司法省に気づかれない内に調べ上げ、合併をコネックス社有利に運ぶことだった。
 
更にもう一方では、ナシール王子の国に出稼ぎに来ていたワシーム(マズハール・ムニール)が路頭に迷っていた。コネックス社で働いていた彼は、ナシール王子が採油権を中国へ譲ってしまったため、ある日突然解雇されてしまったのだ。仕方無く地元のイスラム神学校に身を寄せたワシームは、やがてイスラム教の過激な教義に引き込まれていく。
 
てな感じで、最初は全く関係ないそれぞれのエピソードが、速いテンポで同時進行していく。その描き方がとにかく忙しくて、「えーと、これは誰だっけ?」などと考えている間にどんどん放置プレイ。正直言って2時間8分の映画で、前半の1時間半は何が何やらさっぱり解らなかった。
ところが、それらの群像劇が次第に一つの巨大な陰謀として見え始めると、俄然面白くなってくる。やがて衝撃的なラストへと繋がる手法は、なるほどこうなるのか〜と、思わず感心するほど。
 
て、感心はするけど、そこに至るまでが大変なのよ。ワーナーさん、これ売る気ないでしょ?ていうくらい解りづらいし。アメリカの暗部をここまで克明に告発しておきながら、それを解りづらく描いちゃうのって、どうなのよ。
まあ、既にこうした問題については、これまでもあちこちで書かれてきた事だからね。そういう意味では「ああ、なんか聞いた話だよなあ、やっぱそういうことが実際にあるんだなあ」と思わず唸ってしまう結末ではある。
 
てな感じなので、純粋にエンターテインメントを求める向きにはお奨めしません。そーゆー意味ではつまんないっす。
でも、観るべき映画かと問われたら、観るべき映画だと答えたい。解らなくてもいいから、とにかく観ておけと。ハリウッドにしては珍しく大人の政治映画だ、というのがもう一つの感想だし。ただ、まったくの予備知識無しで観るのはお奨めしない。出来れば先に挙げた本を読むか、小屋でパンフレット買ってじっくり読んでから観て欲しい映画。
まあ、こういう問題の内部矛盾を細かく描いていくと、どうしてもエンターテインメントってわけにはいかないからね。観終わった後も、しばらく胸に何かが残る硬派な作品だが、万人にお薦めできる作品じゃないのが微妙なところ。
 
追記:DVD化されますた
シリアナ [DVD]

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はい、次。