ヒストリー・オブ・バイオレンス

コスプレ夫婦

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アメリカ中西部の田舎町で幸せに暮らす一家が、ヒストリー・オブ・バイオレンス(暴力の履歴)によって危機にさらされるというお話。て、解りづらいか。でもこの映画の場合、あまり(あらすじに関しては)予備知識入れずに観たほうが良い気がするしなあ。
まあ基本的には現代版の西部劇。そうは見えないかもしれないけど、プロットだけ考えれば昔の西部劇でよくあったパターンだもん。それプラス「わらの犬」('71)ばりに痛いバイオレンス描写を、いかにもクローネンバーグ監督(人体損壊描写マニア)らしく描いた作品(笑)。
 
本作をクローネンバーグ監督の新境地とする意見も多いようだけど、俺的にはかなりクローネンバーグらしい作品だったと思う。「異端者」と化していく自分自身を恐れて孤立していく主人公…てのがクローネンバーグ・ワールドのキーワードだとすると、本作はまあその亜流てところかと。違うかもしれんが(笑)
 
本作の特徴は、やはりそのバイオレンス(暴力)描写だろね。徹底して無駄のない機械仕掛けのように完璧な殺人。銃器の扱いや、素手で人を殺す技は芸術的にすら見える。ある意味かっこいい。アクション映画の見本になりうる高度なテクニックが次々と出てくる。
でもそこに残されるのは、脳みそや内臓撒き散らかした無惨な死体。ちっとも美しくない。クローネンバーグの本領発揮というか、とにかくリアルでむごたらしい死体だらけ。
 
そう、本作では「動機が何であれ暴力の結果は同じね」てことを、無理矢理見せつけられる。ほら、これが暴力ってものなんだよ、と。
  
いや、でも、そんな当たり前のこと持ち出されたら映画を楽しめないじゃんか。ていうか楽しめないのよ。感情移入していた登場人物が、正当防衛で敵を倒す。でもその結果=死体をそこまでリアルに描写されると、なんか心から喜べないもん。
 
要はそれが「狙い」の作品なんだろね。
 
勿論、「危機に瀕して愛と信頼を試される家族の物語」という非常に見応えのあるサスペンス・ドラマが乗っかってるので、それだけでも充分楽しめる映画。でも最後に考えさせられるのは結局「暴力」について。て、人類の歴史そのものが、暴力の歴史(ヒストリー・オブ・バイオレンス)だからね。考えたところで今更どうなるものでも無いとは思うが、まあ、こういう映画がヒットするのは悪いことじゃなかろうと。堅苦しいお説教映画じゃないし。
 
とにかく、映画としての完成度は非常に高い。「ブロークバック・マウンテン」の対抗馬として期待大。個人的にはこっちのほうが好みだわ。ヴィゴ・モーテンセンマリア・ベロエド・ハリスウィリアム・ハート、更に言えば新人アシュトン・ホームズにいたるまで、役者陣の名演も見どころの一つ。
 
 
ちなみに原作はジョン・ワグナー作、ヴィンス・ロック作画による劇画。邦訳もされているみたいなので、今度買ってみようっと。

ヒストリー・オブ・バイオレンス

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追記:DVD化されますた
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