大統領のカウントダウン

http://movie.goo.ne.jp/contents/news/NFPkfuln20051204006002/
 
ロシアが初めて世界市場を視野に入れ、ロシア軍全面協力によって製作したアクション巨編。実在するロシアの英雄アルクセイ・ガルキンをモデルにした、ロシア版「ダイ・ハード
 
確かに映像的にはかなりの迫力。テンポも悪くないし、ロシア映画にしちゃ頑張ってるなあ、てな感じ。
 
だが、物語の背景がチェチェン問題(参考)だし、ロシア軍全面協力ということでちょっと引く。だって、それって明らかにロシア政府の意向を反映した映画てことだもん。チェチェンをテロリスト国家として扱うことで、国際世論をロシアに味方させようという魂胆バレバレじゃん。
 
そもそも、オープニングからして微妙。ロシアの特殊部隊長スモーリン少佐がテロリストに拷問された挙げ句、民家爆破事件に関わったと「偽証」させられるところから映画が始まるのだが、このモデルとなった(と思われる)モスクワのアパート爆破事件では、ロシアの治安機関が関与していたという説も実際にあるのだ。いまだ犯人は特定されていないしね(ロシア政府はチェチェン側のテロと発表したが証拠は公表されていない)。
 
(モスクワ劇場やベスラン学校の占拠で悪名高い)チェチェンの過激派が悪役として描かれるのは、まあ仕方無いとは思うけどさ。でも、だいたいどの占拠事件でも、和平交渉を持ちかける犯行グループに全く応じず、特殊部隊を強行突入させて被害を大きくしているのは、どちらかといえばロシア政府側という印象が強いんだよな。
 
その他、とにかく本作では徹底してチェチェン側が悪役として描かれる。ロシア側の無差別攻撃で民間人20万人以上が死んでいるチェチェン紛争に、なんとか正当性を持たせようとする作り手の意図が見えまくり。さすがロシア、海外向け映画を作り慣れてないな〜と感じさせる(笑)
とはいえロシアじゃ本作が大ヒット。ここ最近、厭戦気分に傾いていたロシアの国内世論にどう影響するのか注目…しなくてもいいけど。
 
まあ、あくまで映画ファンの立場で言えば、ロシアで映画産業が盛り上がって「国際市場向けロシア映画」という一ジャンルが確立するかどうかに注目したくなる一本。その意味では観て損はない。もしそうなったら、本作はその第一作として(いろんな意味で)記念的作品になるかもしれんし。
ていうか、本作がチェチェン紛争を正当化するためのプロパガンダ映画だということを知った上で観るぶんには、それなりに興味深いかと。
 
追記:DVD化されますた