ある子供

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ヤな感じベルギー映画。ていうかカンヌのパルムドール大賞作。ダルデンヌ兄弟はこれで三作連続で主要賞の受賞。大賞も二度目か。完全に「名匠」になっちゃったな。
 
20歳のブリュノ(ジェレミー・レニエ)は定職に就かず、仲間(というか手下として使ってる小学生)のスティーブとともに盗みを働きながら、恋人のアパートでその日暮らしをしている。
定職がないし働く気もないというのはニートに近いけど、盗みに関しては真面目。仲間も裏切らない。犯罪に罪悪感は感じてないけど見た目がチンピラ風でもないし、別にイキがってる風でもない。フツーに礼儀正しかったりするし。ある意味一番やっかいな存在かもしれないけど、日本ではあまり見かけないタイプの若者だ。
 
で、その恋人がソニア、18歳。まだ幼さが残る年頃ながらやることはやって妊娠。彼氏が定職に就くまで避妊しとけよ〜と思ったけどもう遅い。映画はソニアが赤ん坊を抱きかかえてアパートに帰ってくるところから始まるのだった。
もう、いきなり暗鬱な未来が見えてヤな感じ。
 
案の定、子供になんの関心もないブリュノは、金のために子供をマフィアに売ってしまう。ショックでソニアが倒れ、ブリュノは慌てて子供を取り戻すが、儲け損なったマフィアに身ぐるみはがれされてしまう。怒り狂ったソニアからは部屋を追い出され、段ボールにくるまって一夜を過ごすブリュノ。だが彼は、自分の何が悪かったのか解らない
 
マフィアに多額の借金を抱えたブリュノは、スティーブを使って引ったくりをするが、被害者に追い回され川の中へ逃げ込むことに。なんとか追っ手をやり過ごしたと思いきや、スティーブが川の冷たさに耐えきれず動けなくなってしまう。
 
何一つ深く考えることをせずに生きてきた若者が、何もかも失って初めて涙を流す。牢獄で。
その涙に救いがあるのか無いのか解らないけど、映画は最後まで緊迫感を失わない。まあ、このあたりは流石。映画としての完成度はなるほど高い。物語的にはやたらと辛い話だし、日本の少年犯罪とは、微妙に背景が違うけど。
 
とはいえ、「大人になれない子供」の話という意味では非常に普遍的な物語。若年層の失業率が20%というベルギーだけの問題とは言えないだろう。その意味では、「ある子供」は我々の子供でもある。いや、もしかしたら我々が既に「ある子供」なのかもしれない。
てことに、気付かされるからヤな映画。
 
追記:DVD化されますた

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