ファイナルカット

http://www.finalcut-movie.jp/
 
ロビン・ウィリアムズ主演の近未来サスペンス(もしくはファンタジー)。
 
そーいえばジュード・ロウの主演作や、サム・エリオットの映画にも同名作品があったな。タイトルのオリジナル性という面ではいきなり失格か。まあ、原題そのまんまなので邦題に罪があるわけではないが。
 
時は近未来。脳内に埋め込む有機記憶装置「ゾーイ・チップ」が、セレブの間で大流行。本人が死んだらそれを取り出して、故人の人生から美しい記憶映像だけ編集した「リメモリー」を上映するのである。故人の汚い過去をも知ってる遺族が集まって「嗚呼、あの人はなんて善い人だったんだろう」と故人を偲ぶのだ。変な流行なんである。
 
アラン(ロビン・ウィリアムズ)は、ゾーイ・チップの映像編集者。全生涯の記憶が記録されたチップには、あらゆる悪事やヤマシイ記憶がてんこもりだが、彼はそうした人間の暗部を気にしない。どんな悪人の記憶でも淡々と編集できる性格が幸いし、業界随一の人気を誇っていた。
だがある日、アランは他人の記憶の中に、自らのトラウマとなっている人物の姿を発見して激しく動揺する。動揺のあまり、本屋の女(ミラ・ソルヴィーノ)を騙して抱いたり、ジャンキーを脅して銃を安く買い叩いたり、他人の建物に不法侵入したりする。
自らの記憶と真実を追い求めるアランだったが、彼が編集中のチップを「ゾーイ反対グループ」が狙っていて…てな話。違うかもしれんが、まあ、そんな感じ
 
最初思っていたほどアイデア一発勝負でもなかったし、ロビン・ウィリアムズの熱演もあってなかなか楽しめた。もっとも、アランとディライラ(本屋の女)の関係性がいまいち解からないし、反対グループを率いる元編集者フレッチャー(ジム・カヴィーゼル)が、なんでそこまで過激に反対するかというところが説明不足ではある。でもまあ、その辺は想像力で補える範囲だしね。
ハリウッド映画は普段が説明過多だから、たまにこういうのに出くわすとちょっと驚くけど、他の国ならこれくらいが普通でしょ。主役のハッピーエンドが望まれるハリウッド映画にしては珍しいエンディングだし、美術的にもどことなくヨーロッパ映画に近い雰囲気。監督がレバノン人、てのも影響してるのか。(て、プレス読み返したらドイツとカナダの合作映画だった^^;)

一風変わった作品として、年末年始の暇つぶしには最適。ロビン・ウィリアムズのファンには特にお奨め。
 
ちなみに監督・脚本のオマール・ナイームは弱冠26歳。大学の卒業制作でドキュメンタリー映画を編集していたとき、「ドキュメンタリーの客観性は誤った神話だ」という、いまどき常識だろそんなもん、という事実を「大発見」したウブな奴である。早速、脚本にしたらいきなり大プロデューサーの目にとまって監督デビューという、なんとも幸運な奴でもある。しかも製作と製作総指揮はお偉いさんに奪われ、映画自体の「ファイナルカット」(最終編集権)は得られなかったという、もしかしたら笑いの解かる奴かもしれないのだった。て、それは普通か。
なにはともあれ、監督の「若さ」が滲み出る映画ではあった。
 
追記:DVD化されますた

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