ランド・オブ・ザ・デッド

http://www.lotd-movie.jp/top.html
 
公開中といえば、こちらもとっくに公開中。つーかもう終わっちゃったな。忘れてたわ。
まあいいか。三軒茶屋あたりの二番館じゃこれからでしょ。この手の映画は二番館で観たほうが雰囲気出ていいしね。(と自分に言い訳)
 
「ゾンビ・シリーズ」といえば、第一作「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(68)でベトナム戦争や人種暴動に揺れるアメリカを、「ゾンビ」(78)では広告に洗脳されるアメリカの消費社会を、「死霊のえじき」は右傾化したアメリカ(レーガン)政権を戯画化したシリーズとしてよく語られる。最初はこじつけかと思ったけど、ロメロ本人がインタビューにそう答えていたから、たぶん、ホント。
というわけで、常にアメリカ社会を批判してきたロメロらしく、本作では911以降のアメリカを戯画化してみせたんだそうな(もっとも脚本の初稿はそれ以前に書かれたらしいが)。
 
ゾンビに追い詰められた人々が立てこもる島の要塞。島の中心にそびえる高層ビルには金持ちの支配階級が優雅に暮らし、その足元では貧しい人々が悲惨な生活を強いられていた。兵士として働かされるチョロ(ジョン・レグイザモ)は必死に働いて金持ち仲間に入れてもらおうとするが、人種差別されて入れてもらえない。ぶち切れたチョロは特殊装甲車を奪って島を攻撃しようとする。
一方、市民の中にも金持ちへの反逆運動が起こる。そして人間同士が争っている間に、知恵を身につけたゾンビたちが島へなだれ込んでくる。主人公のライリーは、娼婦スラック(アーシア・アルジェント!)とともに、チョロのテロを止め、かつゾンビから島を救うために闘うのであった。てな話。
 
ん〜911以降?そうか? なんか普通に観てると90年代のアメリカを描いているようにも見えるんだけどな。金持ち優遇社会って、今に始まったことじゃないし。
もっとも、金持ち集団のボスであるカウフマン(デニス・ホッパー)が、ブッシュのパロディであることはすぐに解かる。「テロリストとは交渉しない」が口癖で、武力と金で人を支配することを楽しんでいるし。デニス・ホッパー共和党支持者だし。
 
本作で特徴的なのは、ゾンビに「ビッグ・ダディ」という指導者が現れること。ゾンビも進化しているのだ。とはいえ「ドーン・オブ・ザ・デッド」みたいにゾンビが全力疾走したりするわけじゃなくて、武器の使い方を覚える。ゾンビが道具の使い方を覚えたら無敵だよ。
しかも少しずつ人間の心を取り戻していくのが面白い。
兵士達に面白半分に殺される仲間を見て、怒りに燃えるビッグ・ダディとその仲間達。やがて武器の扱いを覚えたゾンビが、難攻不落の要塞へ向かって歩き出すシーン。観ているうちに、虐げられた人々が圧制に立ち向かうべく一斉蜂起したように思えるから不思議だ。なんか応援したくなる。やってることは生きてる人間を食ってるだけなんだけどね。

とはいえ、本家ロメロ御大のゾンビは、やっぱり面白い(怖い)。残酷描写に手抜きが無いし。公開終わっちゃったけど、二番館やDVDで、未見の人は是非。
 
地獄の世紀(上) (扶桑社文庫)
ちなみに、知恵を身につけ始めたゾンビが、生き残った人類の集落を包囲するという設定は、どことなく「地獄の世紀」(サイモン・クラーク)を彷彿させる。物資補給部隊と指導階層との対立とか。もっとも「地獄の世紀」で生き残ったのは子供だけという設定だったが。こっちの話も、リチャード・レイモンオフ・ビートなホラーが好きな人にはお奨め。

追記:DVD化されますた