コワイ女

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コワイ女 (角川ホラー文庫)
「コワイ女」をテーマにした、三人の監督(雨宮慶太鈴木卓爾豊島圭介)によるオムニバス・ホラー。
 
一話目の『カタカタ』は中越典子が主演。監督は雨宮慶太
婚約者から「別れた女房に刺された」という電話を受けたOL(中越典子)。振り向くとそこには包丁を手にした赤いワンピースの女が立っていた…という出だしから、わけのわからん異形女とOLの壮絶な鬼ごっこが展開される。ドラマ部分の映像や演出はチープな印象を受けたけど、とにかく異形の女(カタカタ)役の小林祐子が凄かった。こーゆー不気味な動きは舞踏家ならではだろうね。どこか壊れた感じでありながら、憎悪と執念をむき出しにした身体表現はマジ怖かったもん。もっともその動きに慣れてくるとだんだん可笑しく見えてきて、最後はゲラゲラ笑ってたら他の客に睨まれた。ごめん。
 
二話目は鈴木卓爾監督の『鋼 -はがね- 』。いやーこれ面白かったわ。頭から腰までズタ袋をかぶった女(菜葉菜)に翻弄されるダメ青年(柄本佑)の悲劇。結末が予測通りだったのはアレだけど、不気味で不条理でエロティックで、しかも大いに笑える秀作。個人的には三話の中で一番気に入った。香川照之演じる鋼の兄が、すげーコワかったし。
 
三話目は豊島圭介監督、清水崇監修の『うけつぐもの』。
離婚を機に一人息子(須賀健太)を連れて実家に戻った女(目黒真希)が、古い土蔵であるものを見つけ、その家に伝わる呪われた血筋に目覚める話。いかにも正統派の、「日本の怪談」といった趣。女の情念や愛憎の恐ろしさという、本来のテーマには一番沿った作品かも。ただ、ビジュアルで迫る先の二本のおかげで、個人的にはこの時点でもうお腹一杯だったせいか、それほどインパクトは感じなかった。これを第一話に持ってきてくれたら良かったのになあ。
 
実を言えば、いろいろ語りたいことが山のように詰まったオムニバス。めんどくさいから(ていうかここ最近やたらと忙しいので)細かくは書かないけど、これ観ると日本のホラーはハリウッドのそれと違い、単なるジャンル映画を超えた独自の進化を遂げていることがよく解る。全部がそうだとは言わないけど、かなり面白い取り組みをしている監督が増えてきているのは事実だし。
てなわけで、とりあえずホラー好きな人にはお勧めできる一本。まあ、女がコワイのは言われるまでもないけどね(笑)。
 
あ、あと気が付いたのは、コワイ女は膝下の関節が折れたような歩き方をするっていう描写がどの作品にも共通してたこと。それだけで観客は不安感とか不気味なイメージを与えられるわけね。この差異化のパターンは、いかにも日本的な穢れに対する差別とどっかで結びついているような気が…しないでもないが、気のせいかもしれん。