トム・ヤム・クン

人命より象さん

http://www.tyg-movie.jp/
 
ついに公開した、あの「マッハ!」の続編。いや続編じゃないけど、プラッチャー・ピンゲーオ監督&トニー・ジャー主演で、パンナー・リットグライがアクション監督となればシリーズみたいなもんでしょうが。違うか。
 
試写を逃していたので小屋へ行ってきたが、週末とはいえほぼ満員状態。
むさい男ばかりじゃなく、カップルや親子連れが多かったのには驚いた。タイ映画の認知度も上がったなあ。て、シネパトスだったからかもしれんが。
 
しかし、それ以上に驚いたのは本編の完成度。これまでタイ映画といえば、かなり無理のあるストーリー展開が「マイペンライ」だったのだが、本作ではアクション以外のクオリティも格段の進化を遂げている。まあ細かいところを挙げればキリがないんだけど、普通に観ているぶんには気にならないレベルだ。
 
 
物語は至ってシンプル。
王の象を守る兵士“チャトゥラパート”の末裔カーム(トニー・ジャー)。
タイの片田舎で家族同様の象たちと平和に暮らしていたが、ある日その大切な象をなんかの国際組織(よく分からなかったけど、まあ何でもいいじゃん)に盗まれてしまう。大切な象を奪回すべく、カームは単身オーストラリアに飛ぶのであった。てな感じ。
 
次々と現れる強敵を倒しながら、組織のボスを追いつめていく展開はどことなく「死亡遊戯」。そもそも純朴な田舎青年の風貌で、実は圧倒的に強い武術の達人という設定自体が、かなりブルース・リーのイメージとかぶるし、トニー・ジャーのファイティング・スタイルはブルース・リー好きの心を何気にくすぐるのだ。
 
立ちはだかる強敵役は、カポエラの達人役にスタントマン出身のラティフ・クロウダー、剣術使いもスタントマンのジョナサン・パトリック、カンフーの使い手として米国の武術ナショナルチーム代表でありスタントマンでもあるジョニー・グエン、怪力レスラーに元プロレスラーのネイサン・ジョーンズ。中途半端な「俳優」じゃなく(ネイサン・ジョーンズを除けば)ほとんど無名のスタントマンを揃えたところが、いかにもアクション重視の本作らしい。
 
勿論、アクションの過激さは「マッハ!」以上。例によってトニー・ジャーはノーワイヤー、ノーCG、ノースタントのリアルヒッティング(本当に当ててる)・アクション!
まあ本作の売りである4分間の長回しアクションは思ったほどダイナミックじゃなかったけど、クライマックスの49人連続骨折り関節技シーンは、観ているだけで痛くなってくる。実際このシーンで相手役が何人も痛みに耐えかねて失神したというから、その迫力たるや相当なもの(ていうか関節技をリアルヒッティングてどうなのよ)。全員スタントマンとはいえ、痛かっただろうなあ。
 
更に本作では、象の「演技」が実に素晴らしい。母親を殺され、その遺体にしがみつく子象の姿なんて涙なしには観られない。やっぱ象を国の象徴的動物としているタイじゃないと、あんなシーンは撮れないんだろうな。もっとも、象が暴走するシーンだけは、象が大人しすぎてちょっと緊迫感のない映像になってるけど(笑)
 
ちなみに日本公開版のエンディングには、東京スカパラダイスオーケストラの「太陽にお願い」が使われている。これがまた映画にピッタリ!
 
とにかくアクション好きな男子には、激しくお薦めします。
 
追記:DVD化されますた