ブロークバック・マウンテン

Brokeback Mountain
 
ある愛の物語。

まず、孤独な二人が仕事先で出会う。
仕事先は山の中。山の中で二人っきり。普段から孤独を抱えてきた二人、しかも若くて性欲旺盛な時期であれば、ちょっとしたキッカケで恋仲になっても不思議じゃない。一気に燃え上がる情熱。山の夜は冷えるのだ
 
山を下りた二人はそれぞれ別な道を進み、それぞれ家庭を持つが、ふとした時に互いを思い出す。
数年後、片方がもう一人に連絡してみたら相手も同じ気持ちだったと知って、突如焼けぼっくいに火が付く。よくある話。激しく求め合う二人。禁じられた恋こそ燃え上がる。
まあ不倫だし遠距離だし、てことで逢えるのは年に数回。そんな関係が二十年近く続く。
しかしそんだけ続けば、周囲の目も引く。やがて一方の配偶者に二人の関係がバレ、その家庭は崩壊。もう一方もお堅い連中からその行為を責められて自滅。想いを通わせながらボロボロになっていく二人なのだった。
 
てな話は、どこにでもあるわな。いまさら映画で観なくても、週刊誌やワイドショーで充分こと足りる。
にもかかわらず本作がやたらと話題になるのは、冒頭の「二人」が「男同士」だから。
そう本作は、要するにゲイの恋物語なのだ。
 
いつも思うのだが、孤独な(しかも極端に若い)二人が二人っきりの環境で得た恋愛感情って、どこまで純粋なものなんかね。いや別に不純でも構わないんだけど、それをさも「これぞ純愛」と描くのはどうなのかと。たぶんそういう環境にあったら、よほど相手が生理的に嫌じゃなければそうなる確率高いんじゃないかと。まあストレート同士がゲイ関係になるかどうかは別として。この手の話が必ず不倫とか遠距離とかゲイとか難病とか、関係に障害が生じるのはドラマを引っ張るための手段だから解るけど、そもそもの感情が果たして「本物の愛」なのかどうかが、いつも引っかかるのだ。
 
とはいえ、そうした「売り方」さえ気にしなければ、本作は極めて普遍的なアメリカン・ラヴストーリー。セクシャリティの問題を前面に押し出したことで、より感動的(かつ政治的)な仕上がりにはなっているが、本質的にはよくある「愛の物語」。たかが愛。されど愛か。
 
世間的(ハリウッド的)な高評価はともかく、たまにはこういう映画もいいかもと、ふつーに楽しめた作品ではある。映画としての完成度は高いしね。ヒース・レジャージェイク・ギレンホールの演技は素晴らしく、また非常に勇気ある挑戦だと思う。この二人のアカデミー賞ノミネートは確実だろう。
ただあっちでの異常なほどの高評価は、ハリウッド(ハッピーエンド至上主義の中)では悲恋物語が少なくて、彼らにとっては新鮮だったんじゃないかと。違うか。あ解った、あっちの各映画祭の審査員にゲイが多かったんだ!違う?あ、解った!カウボーイが象徴するのは…て、もういいか。俺にはどーでもいい話だ。
いずれにせよ俺的にはそこまで大絶賛出来るほどの感動はなかった。まあ「非常に良く出来た恋愛ドラマ」といったところ(恋愛ドラマは基本的に苦手なのよ)。
 
追記:DVD化されますた

 
その他、短観のみ。