エンパイア・オブ・ザ・ウルフ

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クリムゾン・リバー」の原作者によるベストセラー小説を、クリス・ナオン監督が映画化。
パリ10区のトルコ人街。拷問された形跡のある、三体の惨殺死体が発見される。
迷宮入りを恐れた担当刑事ポール(ジョスラン・ギヴラン)は、悪徳刑事として軟禁中だったシフェール(ジャン・レノ)の助けを借りることに。シフェールはトルコ人街の裏社会に通じており、やがて事件は極右組織「灰色の狼」に結びつく。

一方、「高級官僚の妻」としての記憶を持つアンナ(アーリー・ジョヴァー)は、自らの記憶に違和感を感じていた。記憶を操作されていると疑った彼女は、精神科医の力を借りて真実の記憶を探り始める。やがてアンナの記憶が蘇る時、全ての謎が解き明かされるのだった。てな感じ。
 
たぶん、原作は凄く面白いんだと思う。ベストセラーになったのは、ヨーロッパで公然と口に出すことが憚られていた(知らんかったけど)、トルコの国粋主義組織(灰色の狼)が描かれていたからというのもあるんだろうけどね。
ただ映画となると、謎が解明されていく過程がちょっとわかりにくい。つーか画面が暗くてよく見えないうちに、どんどん話が進んで追いつけなかった(笑)。フィルム・ノワールな雰囲気を出したい気持ちは分かるけど、複雑な構成なんだから肝心なところを暗くしすぎちゃダメじゃんか。リドリー・スコットデヴィッド・フィンチャーみたいな感じにしようとして失敗した感じか。
しかし、この映画観るなら、ちょっとばかり予備知識が必要かも。トルコ人街の極右勢力とか言われてもピンと来ないしね。ていうか試写が始まるまでプレス読まないで爆睡してちゃいかんね、やっぱり。寝起きだと頭まわらないし。
 
ちなみに「灰色の狼」は実在する武装集団。最近の予告自爆テロのすべてがトルコ人だったこともあり、イスラム原理主義的テロのルーツはアルカイダではなく、トルコにあるとする説もある。「灰色の狼」は、そうしたテロ組織の一つと目されているのだ(たぶん)。
本作はその組織をかなり悪いイメージのまま描いちゃってるけど、大丈夫なんだろうかね。それがちと心配。
 
灰色の狼ムスタファ・ケマル―新生トルコの誕生
また「灰色の狼」はトルコ共和国初代大統領ムスタファ・ケマル・アタチュルクの愛称でもある。そもそも「灰色の狼」という言葉自体は、特定の組織じゃなく、トルコ人共通の祖先のことなんだそうな。狼が祖先てかっこいいね。俺も狼がいい! 他は大抵、猿でしょ。クリスチャンはアダムとイブか。あ、人類の祖先は宇宙人て言ってる人たちもいたな。やっぱ狼がいいや。
 
ところでアンナ役を演じたアーリー・ジョヴァー。経歴読んだら、「スペイン メリージャ生まれ。14歳のときに学校を中退し、1年後、ニューヨークへ移る。移住後はダンサーとして何年もキャリアを重ねる。95年頃から俳優としてのキャリアをスタートさせ、いくつかのTVドラマに出演。映画デビューはウェズリー・スナイプス主演の「ブレイド」(98)。その後「ヴァンパイア/黒の十字架」(02未)など」だそうな。
14歳って、日本じゃ中学生くらいでしょ。学校中退してニューヨーク行ってダンサーで食ってたと聞くと、その間の苦労を想像しちゃうよなあ。イヤだけど食うために、みたいなこといっぱいしてきたに違いない。想像だけど。本作でも「いろいろ経験してきました」て感じが出てるもんなあ。よく言えば苦労人(よいのか)だな。とにかくどこか貫禄のある顔してたんで印象に残る女優であった。成功してくれればいいが。
 
まあ、フランス映画にしてはテンポも良いし、ドラマの破綻も少ない。ジャン・レノの悪徳刑事っていうのも珍しいし。サスペンス好きには面白いでしょう。
 
追記:DVD化されますた

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