キサラギ

オタク討論会

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大好きだった(C級)アイドル、如月ミキの自殺から一年。コアなファン・サイトの常連たちはそれを悼み、ハンドルネーム家元小栗旬)の呼びかけで「追悼オフ会」を開催することに。
集まったのは家元の他に、スネーク小出恵介)、安男塚地武雅)、オダ・ユージユースケ・サンタマリア)、イチゴ娘香川照之)の、最もコアなファン5人。
初めて顔を合わした彼らだったが、ミキの思い出話に花が咲き、オフ会は大いに盛り上がる。
そんな中、「彼女は自殺なんかする人間なんかじゃない。殺されたんだ!」という誰かの発言がきっかけで、5人の男たちによる、怒濤の推理合戦が始まるのであった。次々と判明する意外な事実。しかし真相へ近づいたかと思うと新たな疑惑が生まれ、事態は意外な方向へと突き進む!いや、それほど意外じゃないけど!
 
てな感じのワンシチュエーション・コメディ
配給側は「ワンシチュエーション・サスペンス」として売りたがってるみたいけど、基本的にはコメディだな。
  
ほぼ密室劇ということで、役者の演技力が全てと言える映画。そしてそれは、なかなか成功している。特に小栗旬小出恵介が良い。もちろん香川照之は言うまでもなく、彼ら3人がドラマを強引に転がしてみせる。残るユースケ・サンタマリア塚地武雅も特別悪いわけではないので、キャスティングとしてはまずまず。
 
ワンシチュエーション・コメディといえば最近の佳作に『東京原発』というのもあったが、あれはテーマがテーマだけに説明的なシーンが多く、やや舞台演劇っぽい雰囲気であった。その点、本作はいわば推理劇だから、より映画的。低予算でエンターテインメントしようとするなら、こういう些末事を極限まで拡大していく展開が向いてるのだ。
 
それにしても、ワンシチュエーション・コメディとか密室劇とかいうと、日本の場合すぐに「十二人の優しい日本人みたいな…」という枕詞が付くね。プレスでも引き合いに出されてたけど、アレそんなに面白かったかね?いや面白くないわけじゃないけどさ、『十二人の怒れる男』のパロディなら『十二人の浮かれる男』(筒井康隆の戯曲)が最高傑作でしょ。映画化されてないけど。
それに三谷幸喜脚本なら、監督作でもある『ラヂオの時間』のほうが(一種の密室劇としては)はるかに面白かった。最近じゃ『スペーストラベラーズ』なんつーのも面白かったし。いつから『十二人の優しい日本人』が日本の密室劇の代表作になったんだか。
 
まあ、そんなことはどーでもいいが(いいのか)、とにかく本作も、日本の低予算映画としてはソコソコの秀作。こーゆー軽くて、シチュエーションだけで笑わせられる作品は意外と少ないからね。その脚本は『ALWAYS 三丁目の夕日』の古沢良太。監督は『シムソンズ』の佐藤祐市。ほのぼのしたコメディで暇つぶししたい向きにはお奨め。
 
ちなみに、死んだ如月ミキを演じるのは酒井香奈子。まったく売れずに死んだアイドルを演じるアイドルの心境は如何に。
 
6月公開。