不都合な真実

NKYYSD2006-09-05

http://www.futsugou.jp/
 
ゴア元米副大統領による、環境問題解説映画。
 
どう言えばいいのかなあ。えと、まず言っておきたいのは、基本的には出来るだけ多くの人に観て欲しい映画だということ。特にアメリカ人とか。中国人とか。俺とか。地球温暖化を扱ったドキュメンタリーで、本作ほど解り易い作品はない。その意味では、ほんと一人でも多くの人が観るべきだろうと思う。
 
ただ、(ドキュメンタリーであれ)「映画」としては…あまりにもヒネリがないといか、面白みに欠けるというか。
いや「地球温暖化」に関する情報量は豊富だよ。下手な解説書より、よほど多くの情報が解り易くまとめられている。地球温暖化に関する(特にアメリカが抱える)問題を、たった1時間半で、しかも映像つきで、ゴア元米副大統領本人に解説してもらえるんだし。
 
何度も言うけど、この「解り易さ」は特筆できる。子供でも解るくらい丁寧に解説されていて、その点では絶賛したいくらい。
でもその解り易さは、ゴアが(ライフワークとして)やってるスライド講座が実に良く出来ているからであって、この映画の制作陣の功績ではないんだよね。俺が観ていて気になるのは、この映画は環境問題を訴えると同時に、そうした問題に取り組むゴアという政治家のCMフィルムになってるんところ。ゴアという政治家を別に嫌いじゃないけど、それとこれとは別。訴えたいのが環境問題なのか、政治家としての活動なのか。前者の振りして実は後者だったりするんじゃないのか、と疑心を植え付けたらこういう映画にとっては損だと思うんだがな。
 
環境問題をテーマとするなら、それこそマイケル・ムーアみたいにスタッフが(あるいはゴア本人が)、環境保護法案に反対している自動車産業や政治家のところへ行って「なんで?」て聞いてくるとかさ。他の、この問題に取り組んでいる団体も紹介するとか、なんかこう「映画」なんだから、もっと動き回って欲しかった。ゴアの郷里の思い出話とか聞かされても「何だかなあ」です。
 
まあでもあれよ。なんだかんだ言っても、この映画は「観るべき映画」だろうね。アメリカ人が(あと俺とか)。
これまでこの問題については、アメリカは本当に無関心だった。京都議定書からの離脱もそうだし、問題そのものを認めていない企業が多いというか。日本の方が意識でも技術でもはるかに先へ行ってたもの。
でも、ひとたび火がつくと止まらなくなるのがアメリカだからね。この映画がヒットして、世界最大の二酸化炭素排出国家が目覚めてくれたら嬉しいんだけどな。無理かね。
 
10月28日公開。
 
 

地下鉄(メトロ)に乗って

http://www.metro-movie.jp/
 

 
これも一応書いておくか。
 
完成披露試写だったんで、場所は九段会館。レトロ感を狙ったんだろうけど、非常口灯が多すぎて明るすぎるんだよな、あそこ。
舞台挨拶があったのでテレビの取材陣も多数。マスコミの一人として行ってる立場で言えた義理じゃないけど、取材時間長いわ。でも常盤貴子て間近で見るとほんとに小顔だね。芸能人て生で見ると皆綺麗で驚く。
 
1995年に吉川英治新人文学賞に輝いた同名小説の映画化。浅田次郎も「鉄道員」以来すっかり人気作家。人情ドラマのイメージが定着してきた感じ。俺らの世代には「元やくざの馬券師」というイメージが強いんだけどね。「初等ヤクザの犯罪学教室」とか「勝負の極意」なんて方が印象に残ってるし。
 
それはともかく、映画は堤真一演じる真次が地下鉄でタイムスリップしちゃう話。階段上がったらそこは昭和39年でした、みたいな。その時代の真次は中学生くらい。
ていう前半部分でいきなり醒めた。どう考えても年代合わないでしょ。原作が書かれた95年の話だったら解るけど、携帯電話とか出てくるから現代の話みたいだし。39年で中学生だったら現在50歳過ぎだよ。堤真一は、どう老かして見ても40代半でしょ。家族設定的にもそんなもんだったし。最初にそれが気になって、後はどうも身が入らなかった。しかも後半にはタイムトリップ映画における永遠の矛盾「親殺し」まであるし。SF映画ファンとしてはストレス溜まる映画だったわ。
 
まあ、本作にとってはタイムパラドックスは問題じゃないらしい。
主人公が、憎んでいた父親の若かりし日々を知る手段として(タイムトリップが)あるだけで、基本的には「人を赦すこと」や「人を理解すること」の大切さを訴えたかったんだとか。ん〜俺にはさっぱり伝わらなかったけど、言われてみればマアマア描かれていた…かな。多分に原作の力だろうけど。ていうか、今時タイムトリップそのものを描きたいタイムトリップ映画なんてないでしょ。どの映画も「タイムトリップ」は描きたい本筋のための道具に過ぎないわけで。だからといって、タイムパラドックスの問題をおろそかにして良いという理屈は成り立たないんじゃないのかね。まあ、いいけど。
 
てな感じで映画としてはイマイチだったけど、堤真一岡本綾大沢たかお常盤貴子あたりのファンの方はどうぞ。登場人物がさほど多くないから彼らがずっと出ずっぱりで、ファンには喜ばしいことかと。
常盤貴子の演技は例によってアレ。岡本綾は結構頑張ってました。
 

地下鉄に乗って (講談社文庫)

地下鉄に乗って (講談社文庫)