幽霊VS宇宙人

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てことで、久しぶりに観た試写がこれ。ナニゲに凄いでしょ、このタイトル。ありそうで無かったというか、誰もやらなかったというか。そもそも幽霊と宇宙人が、同じ次元でVersus可能なんだろうか?というか。
 
映画は二人の監督による2話オムニバスというか競作で、1話目のタイトルは『ロックハンター伊右衛もん』。 
ヤクザが資産家の娘との縁談を持ちかけられ、邪魔な妻子を殺してしまう。だが、妻は(「四谷怪談」の)お岩の生まれ変わりであり、幽霊となって復活。これまた宇宙人の生まれ変わりだったヤクザと痴話喧嘩を始めるのであった…てな内容(かなり要約)。
2話目は『略奪愛』というタイトルで、男の精気を吸い取るエロい女宇宙人と、売れない作曲家と、その婚約者であるイタコの三角関係を描いた話。ドロドロ(←文字通り)の展開を経て、最後は主人公の作曲家がエンディングテーマを高らかに歌いあげる。歌のタイトルは、「吸ってもいいじゃない」。
 
んー、なんだこれ(笑)。

監督は1話目が「呪怨」の清水崇、2話目が「怪談新耳袋」や「ケータイ刑事」の豊島圭介という、今や日本を代表するホラー監督たちだから、このメタフィクション的自己破壊は明らかに確信犯。一見ムチャな映画だが、実はかなりムチャクチャな映画なのだ(笑)。
…と見せかけて、1話目は鶴屋南北の「四谷怪談」をベースに、チンピラ映画の名作「竜二」のパロディがミックスされているし、2話目も「天使のはらわた・赤い教室」という名作ロマンポルノへのオマージュが込められている(らしい)。映画マニア向けというか、監督自身が楽しんで作っているのが伝わって、かなり愉快な作品となっている。ていうか個人的には楽しめた。
 
そもそもこの「幽霊VS宇宙人」というのは清水、豊島の両監督が始めた自主制作映画のシリーズで、今回初の劇場公開ながら、既に(シリーズ)三作目。マニアの間では「幻のシリーズ」(DVDになってるつーの)とされる貴重なシリーズなんだとか。知らんかったわ。ほんとかね。
 
二話を繋ぐ進行役に、なぜかハリセンボンの二人がショートコントを披露。「アブダクション」とか「キャトルミューティレーション」とか、マニアなSF用語を出しながらも、どんどんグダグダになっていく様が、素で笑える。
 
シネセゾン渋谷でレイト公開中。あ。ちなみにビジュアル(イラスト)担当は会田誠。なんか、そこだけ無駄に豪華な気がするのは俺だけか。
 

ゾンビ・ハネムーン

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『幽霊VS宇宙人』ほどじゃないが、余りの(ホラーらしくない)展開にびっくりしたゾンビ映画。ちなみに『ゾンビ・ハネムーン/大カマのえじき』(1987)とは全く無関係の別作品。 
タイトル通り、ハネムーン先でゾンビに襲われた若夫婦の話で、旦那がゾンビに変身。ここまではゾンビ映画のセオリー通りに話が進むのだが、その先は完璧な恋愛ドラマのセオリー。ゾンビになっても妻を愛する旦那と、それを受け入れようとする妻。しかし旦那は手当たり次第に人間食っちゃうし、どんどん死人みたいな顔になってくし(当たり前だけど)で、若妻の「愛」がひたすら試され続ける。果たして愛の力は、ゾンビの本能に打ち勝てるのだろうか!?…みたいな。
 
ロメロ御大なら、(ゾンビと化した旦那に)真っ先に妻を食わせるだろうけど、まあゾンビ映画市場もそれだけ成熟しちゃったんだろうね。話としては結構面白いというか、解りやすい恋愛ドラマなんだけど、ゾンビ映画でここまで愛を語る理由がイマイチわかん。ゾンビ映画にそんな崇高なテーマは期待してないのよ、俺としては。ていうか、愛だの友情だのといった人間独自の関係性が、本能の趣くまま動き回る死者によって、いかに脆く崩れ去るかを描いたほうが怖いでしょ。
てことで、個人的には途中でバカらしく感じてきたのだが、若妻役のトレーシー・クーガンが意外と演技上手で、つい最後まで観てしまった。どことなく若い頃のシガニー・ウィーバーを彷彿させる美貌。結構気に入った。でもたぶん彼女がスターになることはない気もする。なんとなく。
 

ノーカントリー

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で、ヘタなゾンビより、人間のほうが何倍も怖いということを描いたのがこの作品。詳細触れたくないので短観しか書かないが、とにかくおかっぱ頭の殺人鬼こと、ハビエル・バルデムが怖すぎ。

映画としては、これはもう完璧なコーエン兄弟の世界。オスカー獲ったからって、ふつーのハリウッド大作と思って観ると、ラストに辛い思いをするので注意(笑)。カタルシスの欠片もないからね。デートには向かないかも。
まあ、コーエン兄弟の犯罪モノが好きな人には、まさしく決定版だろう。最高傑作の呼び名も納得。個人的には非常に満足できる作品であった。
あと、役者に関して言えば、ハビエル・バルデムばかりが話題になってるけど、ジョシュ・ブローリンが非常にかっこ良かった。『アメリカン・ギャングスター』の時以上の演技で魅せる。他、ウッディ・ハレルソンとトミー・リー・ジョーンズはいつも通りって感じ。特にトミー・リー・ジョーンズは、時々缶コーヒーのCMに見えて、思わず笑ってしまった。
 
15日公開。