コマンダンテ

今夜どこ行く?

 
宿直明けで行ったもんだから、試写が始まる寸前まで(試写室で)爆睡。始まってからも眠くて眠くて、もういっそこのまま目を閉じて寝てしまおうかと思ったんだけど、内容が結構興味深かったもんで、次第に目が覚めちゃった。
 
オリバー・ストーン監督自身が、フィデル・カストロにインタビューするドキュメンタリー映画アメリカではテレビ上映や劇場公開が禁止されたが、各国の映画祭などで上映され、日本でも今夏の上映が決まった。
 
キューバの政情や社会事情について、終始カストロ本人の言葉で語られる。
30時間に及んだというインタビューでは、チェ・ゲバラとの別離、キューバ危機の真相、知られざる私生活といった部分にも踏み込んでいて、なかなか面白い。もっとも雄弁さで知られるカストロだし、インタビューそのものは慣れっこだろうし、その受け答えのどこまでを信じるか、という問題はあるだろうけど。それでも、歴史上のアレコレに対するカストロ本人の見解を知るのは、かなり興味深いものだった。
 
ただ正直言って、つい最近まで俺にとってキューバて国はそれほど関心のある国じゃなかったからね。キューバ音楽は素晴らしいと思ってたし、クーバ・リブレはよく飲んだけど(笑)。たまたま昨年『チェ・ゲバラカストロ』というDVDを観て興味を覚え、何冊かの本を流し読みしたりしてなかったら、本作を興味深く楽しめたかは疑問だった。
 
それにしても、昔(1980年代頃)はアメリカへ逃げ出す経済難民なんかを見て「あ〜もう長くは続かない体制なんだろうなあ」て思ってたもんだけどねえ。当時の(キューバの)経済危機はソ連の崩壊、アメリカの経済封鎖という事情が大きかったとはいえ、そっからよく持ち直したもんだわ。実にしぶとい国だ(笑)。
そう思うと、革命から(2009年で)50年にわたる革命指導者であり、これまで10人の歴代米大統領がその体制を倒すことの出来なかったカストロという男は、まさに20世紀最大の革命家かもしれない。その意味で、本作は歴史的に貴重なドキュメンタリーの一つだろう。
 
ちなみにアメリカでは、本作の(アメリカ政府への)批判的視点を抑えたバージョン『Looking For Fidel』が2004年に公開されている。そっちは日本未公開なので、出来ればそっちも観たいところ。
しかし最近の、ていうか911以降のアメリカってのは、自国への批判に敏感だな。批判を封じ込めようとする動きもあるし。どこが自由の国なんだか。
本作のラストにも、「社会がわずかな安全を得るために少しでも自由を犠牲にすれば、その社会は結局どちらも手放す事になる」というベンジャミン・フランクリンの言葉が流れる。いかにもオリバー・ストーンらしいというか、カストロへのインタビューを通じて、結局はアメリカの問題点を浮き彫りにしたかったのかもしれん。
  
ちなみついでに。

チェ・ゲバラ&カストロ [DVD]

チェ・ゲバラ&カストロ [DVD]


上でちょっと書いた『チェ・ゲバラカストロ』というDVD。『バベル』でも強烈な印象を残したガエル・ガルシア・ベルナルが、『モーターサイクル・ダイアリーズ』に続いてゲバラを演じた…て聞いたから観たんだけど、原題「FIDEL&CHE」からもわかるようにドラマの中心はカストロゲバラはめちゃめちゃ脇役だった(笑)。
 
元々はアメリカのテレビドラマで、放映時間は3時間半という長編。それを日本のレンタル用(120分)にカットしまくってるから、ドラマも登場人物の関係も分かりにくいったらありゃしない。ひどいDVDだわ。
 
それでも、キューバ革命に関する解説用DVDとして観るなら、まあまあ巧くまとまっているんである。その描き方によってだいぶ「アメリカ寄り」なプロパガンダ・ドラマになっているが、ベースになっている事件や地名、人名や船の名前まで、ほとんど事実通りに描かれているので、そこだけ拾ってメモするぶんには(サブテキストとして使うには)簡単便利かと(笑)。
 
他、当時流し読み(別名:立ち読み)した本(で覚えてるやつ)→フィデル・カストロ 20世紀最後の提言―グローバリゼーションと国際政治の現況現代キューバ経済史―90年代経済改革の光と影
 
コマンダンテ』は、今年の5〜6月頃公開予定。